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春の海風はまだ冷たい A Cross the Boderline

 「春の海の どこからともなく 漕いでくる」 種田山頭火

国境を越える峠には、まだ融雪剤が撒かれているのではないかと一瞬不安になったが、海まで往復120マイルのツーリングに出た。

このところの陽射しは暖かく、散歩のような短距離ツーリングにはちょうど良い季節だ。しかしまだ何を着て行くか迷うのも事実ではある。今回は間違いのないところで厚手の革で出来たヘビーウエイトなジャンパーを選択した。

私の80キュービックインチのハーレー・ダビッドソンにはS&SのEタイプ・キャブレターが付いている。エアクリーナーは定番のティアドロップ型のクロームカバーだ。先日それを2インチのショート・ファンネルに変えた。エンジンにゴミや石が飛び込まないよう、細目のステンレスメッシュを挟み込んだ。実はこれホームセンターで100円で買った灰汁取り用のお玉を分解し作った。

ただでさえ気候変化、気圧変動で気むずかしくなるキャブレター。しかしインジェクションでは私は楽しくないのだ。自分にしか扱えない、まともに走らせることが出来ないオートバイになっていることが嬉しいのだ。

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自宅を出るとRoute18を使い海に向かって走り始めた。国境の関川にはまだ路肩に大量の雪が残っている。交通量は思っていたよりもかなり少ない。バイクともすれ違うが、まだまだ少数だ。

気温はそれほど低くはない。写真を撮ろうと路肩に停まり妙高山を見上げた。山肌は真っ白の雪に締められている。まだ冬なのだ。エンジンが冷えてしまう前に国境を蹴り飛ばし走り出す。

海まであと20マイルだ。

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妙高山が視界から消え、背後になる頃には、道連れはエンジンと風の音、キャブからの吸気音、やはりそれだけでは寂しくなってしまうことも事実だ。

オートバイに乗っていると時々「ロンサムカウボーイ」と言う言葉が頭に浮かぶ。昔吸っていたマルボロのテレビ・コマーシャルが懐かしく甦る。カウボーイ達が牛と旅するテレビ・コマーシャルだ。本物のチャップスと乾いた土埃、ジッポーで火を付ける紙巻きたばこが旨そうだった。今ではたばこのテレビ・コマーシャルが流れることはない。たばこから離れてもう20年、私にはマルボロの香りを思い出すことは出来なかった。

そういえば「ロンサムカウボーイ」というキャッチコピーが使われていたのはマルボロのコマーシャルではなく、パイオニア製のカーオーディオのシリーズだった。
中年の男が乾燥しきった砂漠でバドワイザーの空き缶を拳銃で撃っている。飛び上がる薬莢から判断すれば、拳銃はオートマチックなのだろう。着弾し撥ね上がるバドワイザーの空き缶と舞い上がる土埃。変化と色に乏しい映像に、暮らしてきた地名だけを読み続ける抑揚のない片岡義男のナレーション。それだけで十分に空虚な砂漠を表現できていた。今の時代、こんなテレビ・コマーシャルを作ることも流すことも出来ないだろう。

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Route18は突き当たりRoute8になる。交差点を左折し、まだしばらく街の中を走らないと海には出会えない。2車線のRoute8を車の流れに逆らうこともなく数マイル走る。そして暗くて狭いトンネルを過ぎると海が面前に広がった。

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時間はすでに12時をまわっていた。海は強風に煽られ荒れていた。天気は良いのだが、山よりも寒い。革製のジャンパーを着て来て良かったと思う。腹も減ってきたので名立の国道沿いにある、鱈汁の旨い店へとアクセルを煽る。

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     名立食堂で「鱈汁と海鮮丼」

海からの風に吹かれ、道はすっきりと晴れ渡った空と同化し、カモメはやっと暖かくなった風に春を満喫ししていた。海風に建つ風力発電機のプロペラシャフトは低い唸り音を響かせ、存在を主張していた。すべては青い空があるからこそ成り立つ風景だった。

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海を眺め、春に触れ、今日はちょっとだけ片岡義男の世界をまねしてみたくなった。

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    波の音たえずしてふる郷遠し   種田山頭火

また国境を越え、家へ帰ろう
    Ry Cooderの「A Cross the Boderline 」を聞きたくなった



次の週末はハーレー・ダビッドソンの外観を少しカスタムしよう。やっと見つけた他のペグ類と同じデザインシリーズのブレーキペグの交換。後輪の横に付いている革のツーリングバッグをリアフェンダーの上へ移動するためのシーシーバーの取り付け。黒いゴム製の燃料ラインをステンメッシュホースへ変えるための作業を予定している。
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Author:cjjfish
信州からオートバイ乗りのオヤジがツーリング、燻製作り、家庭菜園のことなどを種田山頭火の句と織り交ぜ書き連ねます

  山あれば山を観る
 雨の日には雨を聴く
    春夏秋冬
  あしたもよろし
  ゆうべもよろし
すなおに咲いて白い花なり

   種田山頭火

Twitter つー坊 @cjjfish

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