長い冬に備え燻製を作るのだ

すっかり枯れて 豆となってゐる  種田山頭火

晩秋を過ぎると家庭菜園の農作業も一段落。野菜は枯れて次の春の為に豆をなしている。

オートバイ乗りのオヤジは春、夏、秋と一緒に疾走ってくれたオートバイを洗い、ガソリンを満タンにし、キャブレターに残ったガソリンを抜く。冬の間雪に閉ざされる信州のオートバイ乗りはこれから春まで、オートバイを冬眠させるのだ

そしてこの時期からオヤジは燻製オヤジに変身する。10月はじめからずっと食欲魔神となって1ヶ月毎週末に肉と戦う。
10月の信州は空気が乾燥し、気温が下がるので、外気にさらし長期熟成させる生ハム、サラミ、パンチェッタ作りに適した季節なのだ。そしてそれは燻製作りを趣味にしているオヤジにとって愉しみな季節なのである

ももやロース肉のかたまりを塩漬けして干す生ハムは3ヶ月、腸詰めして作るサラミは2ヶ月、バラ肉を塩漬けして干すパンチェッタは1ヶ月以上干したい。長期熟成する生ハムは燻煙をかけないので腐敗、カビとの戦いになる。とはいえ、充分に細菌管理をして干しておくだけなんだけどね

まずは生ハム。インターネットを見ていると数週間から1ヶ月ぐらいで食べちゃう人も多いけど、本場のイタリア人が「あれは塩漬け肉の刺身で生ハムじゃない」と言った言葉が忘れられない。やはり1ヶ月程度で食べちゃうよりは3ヶ月程度熟成させた方が間違いなく美味しい。ただし長期熟成は、出所がしっかりした新鮮な肉を使うことが大前提だ。
まあ、本来の生ハムは骨付きもも肉を1年以上熟成させるということはわかるが、ここ信州でも梅雨の湿気、夏の高温を考えると、1Kgほどの肉を熟成させるのは冬の三ヶ月が精一杯だと思っている。

分厚い脂肪で守られた骨付きのもも肉なら日本でも1年以上の熟成が可能なのだが、2万円もするもも肉一本を買う勇気をオヤジは持ち合わせていない


最近ハウツー本やブログで「簡単 燻製作り」がはやっているようだ。「簡単」なことは始めてみるには良いことで、あえて否定するものではないが、できれば本来の燻製、ハム作りに是非挑戦して欲しい。ゆで卵やちくわなんぞを燻してるんじゃなく、「簡単」を卒業したら、じっくり熟成させた肉を燻して欲しい。

それはめんどくさくて、手間も時間もかかる物だが「趣味なんだから手間を愉しむ気構え」で遊んでくれ。最初に「簡単な方法」を覚えてしまうと、その先にある「奥の深さ」を知らないままになってしまう。「燻製やハムが持つ本来の味と豊かさを知って欲しい」と、偏屈になり始めたオヤジは強く願うのである





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塩だけで2週間漬け込んだ肩ロースブロックをもう2ヶ月こうやって倉庫の天井に吊している。白く吹き出したのはカビじゃなくてアミノ酸ね。熟成は進んでいるのだ

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これは去年ロース肉で作った生ハム。塩気が薄くて反省材料となった。一年に一回しか作れないところは野菜と似ている

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こちらはサラミ、20度以下の冷燻を1週間かけてから倉庫の天井に吊している

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吊して一ヶ月半経ったサラミ、切り口の大理石模様に感動していただきたい。サラミを作るときに混ぜるブランデーを餌に酵母が乳酸発酵して熟成するのがサラミ。だから本物のサラミは酸っぱいのだ。ご存じだったかな

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これはバラ肉を塩漬けして干して作るパンチェッタ。断面の脂の白と赤身のコントラストが綺麗でしょう。アマトリチアーナやカルボナーラはベーコンではなく、本来パンチェッタで作るのだ

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炒めると熟成したパンチェッタの脂は透明になる

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オヤジ自慢のカルボナーラだよ

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今年はパンチェッタに燻煙をかけてシュペックを作ってみた。オーストリアやドイツ、イタリアの北部で生ハムに燻煙をかけて作るシュペック。生ハムとはまたひと味違う香りと味が楽しめる。まだ熟成中なので切ったらツイッターにアップするのでお楽しみに

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生ハム、シュペック、サラミを並べてみた。夕日を浴びて美味そうだがまだまだ食べない

年末にはロースハムそしてスモークサーモン、スモークチーズを作り、正月を迎えるのが燻製オヤジの一年の締めなのだ
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スモークサーモンは10度以下の冷燻で作るのでこの時期しか作れない

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スモークチーズはゆっくり二日がかりでスモークし、オヤジはこの色づきにこだわる

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去年丸く成形しなかったロースハム 今年は丸くするぞ

今年は雪が遅く乾燥した晴天が続いたので、例年より乾燥が早く進んだ。早ければ良いという物ではなく熟成と乾燥のバランスを取るのが難しい。干からびた生ハムになってしまった年もあった。カビでどうにもならない年もあった。塩辛かったり、味がしなかったり、腐らせたことはないがオヤジも結構失敗を重ねているのだよ。
ここに来て湿度が上がったので何とか干からびず持ちこたえているようだ。カビの発生が心配なので世界最強の酒、96度のスピリタスを霧にして吹き付けている

今年の正月は珍しく娘が帰ってこられるようなので、家族で燻製、ハム三昧だ。雪に埋もれる季節だが、暖かい部屋で赤ワインやビールでやっつける生ハム、サラミは、それまでの苦労(吊しておいただけなのにね)が吹き飛ぶ旨さなのだ


  雪ふる 食べるものはあつて 雪ふる  種田山頭火



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Author:cjjfish
信州からオートバイ乗りのオヤジがツーリング、燻製作り、家庭菜園のことなどを種田山頭火の句と織り交ぜ書き連ねます

  山あれば山を観る
 雨の日には雨を聴く
    春夏秋冬
  あしたもよろし
  ゆうべもよろし
すなおに咲いて白い花なり

   種田山頭火

Twitter つー坊 @cjjfish

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